地元に愛される
弁当製造業の事業承継
会社の発展を願いM&Aを選択
譲渡側
有限会社秋田ランチサービス(秋田県)
前社長 伊藤 一様
弁当業界の荒波を乗り越えた35年間
<御社の沿革を教えてください>
創業は昭和62年です。当時は小さな喫茶店を経営しながら今と同じ業態でお弁当を販売していました。大きな売上はありませんでしたが、家族が食べていくには十分でした。しかし、そのうち大手弁当チェーンが秋田にも進出するようになり、周囲の同業者に少しずつ影響が出始めました。私たちも何か策を講じなければならないと考え始めたころに、現在加盟している弁当チェーンからの打診がありました。これをきっかけに食数は大きく伸び、現在は1日1,800食を販売しています。秋田市内にこれだけの食数を製造できる設備を持つ同業者は少なく、東日本大震災の時には皆さんにおにぎりやちょっとしたおかずを提供し、喜んでもらったこともあります。ただ、最近ではコロナの影響もあり企業向けの弁当販売が減少したほか、以前は弁当を配達していた幼稚園や保育園も園内に給食設備を設けるようになるなど、弁当の供給が減少傾向にありました。売上の改善のために自社ブランドの餃子を販売し始めましたが、想定していた売上にはまだつながっていません。
事業承継の難しさを改めて感じた
<事業承継をするまでには多くの困難があったとお聞きしました>
事業承継を考え始めたのは10年以上前になります。最初は後継者を育成して後を継いでもらうつもりでした。何度か社外から後継者候補を採用しましたが、業界特有の長時間労働や目立たない業界ということもあり、やりがいを持ってもらうことが難しく、親族も含めて後継者の育成を断念しました。その後、取引銀行に相談したところM&Aの情報があり、検討を始めました。東京の大手M&A会社と契約して候補先を探しましたが、お相手は見つかりませんでした。事業承継が難しいものだとはわかっていましたが、これ程とは思いませんでした。一度は諦めて廃業も考えましたが、多くの従業員を抱え、お弁当を楽しみにしてくれているお客さまがいるため、簡単には辞められないと考え直しました。そんな折に、取引銀行からAOBAさんを紹介され、再度M&Aに取組むことにしました。今回のお相手について初めてお話を聞いた時には、地元で有名な企業が私たちに興味を持ってくれるのかと不安でしたが、話をしてみると、事業内容がお互いを補えるぴったりの間柄だと思いました。
ビジネスの真の価値を理解してくれた
<M&Aの交渉はいかがでしたか>
手続きを正しく行うことや、株式の価値がいくらになるのかも勿論大事ですが、お相手にビジネスの価値を正しく理解してもらうことが最も重要だと感じました。お相手が興味を持ってくれているとはいえ、弁当製造・配達業は簡単そうに見えてとても難しいビジネスです。一度食べてしまえば形が残らず、常においしくて新しいものを追求していかなければなりませんし、人や企業とコミュニケーションをとり続け、食数を確保していかなければなりません。ただ、努力し続けた結果はしっかり食数とお客様の数に表れてきます。今回はそこに価値を見出してもらったからこそ事業承継が成就したのだと思います。
何度も足を運んでくれたので、安心して進めることができた
<AOBAの対応はいかがでしたか?>
大満足です。右も左もわからない中でしたが、何度も足を運んでくれて、詳しく説明をしながら進めてくれました。最後までスムーズに手続きを終えることができたのはAOBAさんのおかげです。今後は、事業承継に困っている経営者仲間にもAOBAさんを紹介したいと思います。
心に余裕ができたからこそ、新しい発想が生まれる
<事業承継を終えてどのような気持ちですか>
ひとまずはほっとしています。これまでの会社の規模では、やりたいと思っていても実行に移せないこともありましたが、規模の大きい会社に事業を承継してもらうことで、より会社が発展していくことをとても嬉しく感じています。一方で、譲渡した身として、お相手には「引き受けて良かった」と思ってもらいたいので、できるだけ良い状態で引継ぎができるように気が抜けない部分もあります。当面の間は引き続き事業に関わっていけるため、働き方はほどほどに抑えながら、会社に貢献できるようにしていきたいと思っています。引継ぎが終わったら、趣味のゴルフやギター、旅行などをしたいと考えており、今から期待に胸を躍らせています。
AOBAから
従業員の雇用、会社のさらなる発展を願う事業承継のお手伝いができて本当に良かったです。M&Aをきっかけに更に飛躍されることを祈念します。本日はどうもありがとうございました。