【譲渡企業】金属加工業の事業承継

【譲渡企業】金属加工業の事業承継

小回りの利く技術屋集団が描く未来
お互いの強みを活かしたシナジーを期待

譲渡側
株式会社後藤製作所(宮城県)
前社長 後藤 公夫様

電子部品生産事業の事業承継案件

会社を成長させることが親孝行

理工電気様

<御社の沿革を教えてください>
昭和36年 創業者である父が自宅の庭先に小屋を建て、旋盤機を使って金属加工をしたのが始まりです。高度経済成長期で世の中全体が豊かさを求める時代でした。やがて住宅地で製造業を営むことが難しくなり、仙台市の斡旋で製造業7社が集まる現在地に工場を新築移転しました。私は高校から親元を離れ、そのまま東京で就職していましたが、父が工場を新築したと聞いて、いずれ会社を継ぐ時が来ると思い、昼は金型製造の会社で働き、夜は工業大学に通い知識と経験の習得に励みました。 身に着けた技術を活かせると思い入社したものの、社長の父から命じられたのは営業担当でした。経験のない営業に悪戦苦闘の毎日でしたが、取引先のエレクトロニクスメーカーの方々に色々と教えてもらい、とても勉強になりました。その後、経理全般も担当することになり、これも顧問税理士に一から教えてもらい身に着けました。 父が始めた事業を成長させることが親孝行だと考え、「小回りの利く技術屋集団」を標榜して技術の研鑽と信用の獲得を第一に経営してきました。

事業存続の危機を超えて

<ビジネス環境に大きな変化があったそうですが>
平成15年のソニーショック以降、エレクトロニクス関連の受注が大幅に減り、新たな受注先の開拓を余儀なくされました。そのタイミングで開始した航空機業界の仕事は、徐々に受注額を伸ばしていました。平成19年、さらなる受注取り込みのために、航空機業界の厳しい要求精度や検査基準に応えられるよう新工場を建設し、機械設備への投資も惜しみませんでした。ところが、平成20年、リーマンショックが起きて世の中すべてが停滞するような不況に襲われました。大きな投資の直後だっただけに、会社の信用不安が囁かれる状況でしたが、個人資産を拠出して何とか凌いでいました。悪いことは重なるもので、平成23年には東日本大震災が発生し、先行きが見通せない状況となったため、取引金融機関の支援を仰いで経営の安定化に努めました。その後、政府の観光立国政策などによるインバウンドの増加を受けて、航空機業界からの受注はうなぎ上りとなり、業績はV字回復を果たすことができました。順風満帆と思っていた矢先、今に続くコロナ禍となり、最近になってやっと、活況が戻る気配が感じられるようになりました。

事業の存続と従業員の雇用を第一に考えて

<M&Aを検討するきっかけは何でしたか>
父が興した事業を引き継ぐのはひとり息子の務め、親孝行と考えていましたが、私自身は、最初から子供に継がせる考えはありませんでした。長く会社経営をしていると、経営者と従業員の考えがまったく異なることに気づかされたので、従業員に承継することも考えませんでした。事業の存続と従業員の雇用継続を第一に、ずい分前から事業引継ぎ支援センターに相談して第三者承継を模索していました。私自身大病を患ったこともあり、早くお相手を見つけたいと思っていましたが、なかなか思うように進みませんでした。そんな時に、お世話になっている信用金庫の支店長からAOBAさんを紹介され、事業引継ぎ支援センターにも後押しされたことが、今回のM&Aの契機になりました。

絶妙な事業領域の違い

<M&Aの交渉はいかがでしたか>
引地精工さんは同じ製造業で、取引関係はなかったものの商談会などで面識がありました。数多くの大企業へFA機器の納入実績があり信頼できるお相手だと分かっていました。社長と専務は若くてエネルギッシュで、最初から好印象を受けました。お互いの事業領域は隣接しており、それぞれに強みがあるのでシナジーが期待できると思いました。交渉はとんとん拍子に進みましたが、お互いに忙しい仕事の合間を縫ってのスケジュール調整に時間がかかり、少々気をもみました。顧問税理士の日頃の指導のおかげでDDもスムーズに終わり、譲渡契約まであっという間でした。

地元のアドバイザーだからこそ

<AOBAの対応はいかがでしたか?>
何度も足を運んでくれて親身に相談に乗ってもらい感謝しています。当社の事業をよく理解して、ぴったりのお相手を紹介してくれたのが何より嬉しかった。M&A後の両社の未来を考えて色々とアドバイスをしてくれたこともありがたかったです。

両社の未来を見据えて

理工電気様代表

<M&A後について教えてください>
譲渡後は、引地精工さんの専務が当社の新社長に就任し、経営の舵取りをしていきます。従業員の技術力や真面目な仕事ぶりには何の心配もありませんが、当面の間、私は顧問としてしっかりと引継ぎをしていきます。既存の取引先に加えて、引地精工さんとの協働関係の構築に注力して、今まで以上に会社を成長させるお手伝いをしたいと思います。 個人的には、今までお世話になった方々への恩返しの代わりに、講演活動などを通して、今回のM&Aの経験や会社経営で学んだことを若い方々に伝えていきたいと思います。それから、ずっと支えてくれた妻には、何か直接恩返しをしたいと思います。自分では、体力増強と健康維持のために始めたウォーキングを続けることと、しばらくぶりにゴルフを再開したいと思います。今まで以上に健康に気をつけて、何らかの形で世の中のお役に立ちたいと願っています。

AOBAから

幾多の困難を乗り越えて会社の存続とお客様との取引継続、従業員の雇用を守ってこられた御社の事業承継のお手伝いができて本当に良かったです。M&Aをきっかけに更に飛躍されることを祈念します。本日はどうもありがとうございました。